皆さまこんにちは。アマタシティ・ハロン(Amata City Ha Long)工業団地(ACHL)に常駐している大美賀です。駐在員レポの第2回をお届けします。

今回のテーマは「工業団地を決めた後から、量産開始まで」です。進出検討向けの情報は世の中に多くありますが、「決めた後に実際何が起きるのか」がまとまった情報は意外と見当たりません。日々の立上げ支援の中で見えてきた標準的な流れと、よくある落とし穴をご紹介します。

【今号の現場から】Job Fair 2026を開催しました

2026年3月28日、クアンニン経済特区管理委員会(QEZA)とACHLの共催で「Job Fair 2026」を工業団地内で開催しました。昨年に続き2回目の開催で、今回は29社に出展いただき、周辺地域の求職者の方々や職業訓練校・大学の最終学年の学生さんなど、1,200名を超える方にお越しいただきました。
当日はクアンニン省人民委員会のグエン・ティ・ハイン副委員長をはじめ、QEZA、クアンイェン・ウオンビー地区の9つの地元行政区、各教育機関の代表の方々にご出席いただき、アマタベトナムの須藤副CEOがスピーチをしました。私も運営側として参加しましたが、行政や教育機関の皆さんの熱の入り方から、地域の雇用創出への期待の大きさを感じました。

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(写真:Job Fair 2026会場の様子)

入居企業さまの「人材確保」を工業団地としてどう支えるか。この話は、本編の最後でもう一度出てきます。

本編:工業団地を決めた後から、量産開始まで

「工業団地が決まったので、あとは工場を建てるだけ」と思われる方も多いのですが、実際には契約から量産開始まで、標準的には2年〜2年半程度かかります。この間に法人設立、許認可、設計、建設、検収、採用と、性質の違うタスクが並行して進みます。以下、道のりを5つのフェーズに分けて、それぞれでよくある落とし穴と併せてご紹介します。

フェーズ1:契約・現地法人設立(目安:3ヶ月)

土地賃貸予約契約の締結後、投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)を取得して現地法人を設立し、資本金払込みや銀行口座開設などの手続きを進めます。

落とし穴①:IRCの事業範囲を狭く書いてしまう。当面の製造品目だけを書くと、将来の事業拡張の際にIRC修正手続きが必要になります。中長期の事業構想を踏まえた記載にすること、そしてドラフト段階で早めに行政当局とすり合わせておくことをお勧めします。

フェーズ2:設計と許認可(目安:6〜9ヶ月)

消防設計承認(PCCC)、環境関連の許認可、建設許可などが必要で、立上げ全体の中で最も時間が読みにくい工程です。

落とし穴②:日本の設計をそのまま持ち込む。ベトナムの消防基準は日本と異なる点が多く、親工場と同じ設計では承認が下りないケースがあります。ベトナム基準に詳しい設計会社と早い段階から組むことをお勧めします。

落とし穴③:許認可のリードタイムを楽観視する。書類の追加要求や修正指示は珍しくありませんので、余裕を持ったスケジュールが現実的です。当工業団地では、QEZAをはじめ行政機関と日常的にやり取りし、手続きが滞らないようサポートしています。

フェーズ3:建設(目安:10〜14ヶ月)

落とし穴④:雨季を考慮しない工程計画。ベトナム北部の雨季は概ね5月〜10月です。土工事・基礎工事が重なると遅延リスクが高まりますので、可能であれば乾季のうちに基礎工事を終えられるよう、逆算して工程を組むのが理想です。

落とし穴⑤:品質管理を施工会社任せにする。施工品質の考え方には日本との感覚差があります。定例会議や写真記録、第三者検査機関の活用など、発注者側が自ら品質を確認する体制が重要です。

フェーズ4:竣工・検収 ―「竣工式=操業開始」ではない(目安:2〜4ヶ月)

竣工後も、建設完了検収や環境関連の検収など、操業開始までにクリアすべき手続きが残っています。

落とし穴⑥:竣工後の手続き期間を計画に入れていない。竣工から操業開始まで数ヶ月かかることもあります。量産開始時期から逆算した全体工程に、あらかじめ織り込んでおくことが大切です。

落とし穴⑦:設備輸入の通関を甘く見る。HSコードの分類や中古設備の輸入規制など、通関で思わぬ時間がかかることがあります。輸出加工企業(EPE)の場合は税関の検収も必要です。据付け工程から逆算して早めにスケジュールを固めておきましょう。

フェーズ5:人 ― 採用は「竣工後」では遅い

落とし穴⑧:採用開始が遅すぎる。目安として、量産開始の半年前には管理職・ラインリーダー・通訳などコア人材の採用を始め、オペレーターは試運転に間に合うタイミングで確保するイメージです。建設中から人事担当者を先行採用しておくと、量産への移行がスムーズです。

この採用を支える取り組みの一つが、冒頭のJob Fairです。行政・教育機関と連携して地域の労働力と入居企業をつなぐ場を毎年設けているほか、個別の採用イベントも実施しています。バイク通勤圏に人口集積があるという立地特性(第1回でご紹介)と合わせて、「人が集まる工業団地」であり続けることが私たちの重要なミッションです。

おわりに

今回ご紹介した8つの落とし穴は、どれも事前に知っていれば避けられるものです。現地に常駐している私たちの役割は、この過程を企業さまと一緒に進めていくことだと考えています。
ベトナム進出をご検討中の皆さま、ぜひ一度現地にお越しください。建設中・操業中の工場を実際にご覧いただくのが一番の判断材料になると思います。
皆様とハロンでお会いできるのを楽しみにしています。